夏目小太郎の映画批評
夏目小太郎が独断と偏見で映画批評
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2008/07/04 Fri  21:57:31» E d i t
呉清源 極みの棋譜呉清源 極みの棋譜
(2008/07/02)
チャン・チェン柄本明

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「青い凧」や「春の惑い」などの田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)監督が呉清源の著書「中の精神」などを読んで感動し3年間の準備期間を経て撮影した力作である。冒頭、神奈川県に住む呉清源自身の自宅で妻の和子さんと呉清源、彼を演じたチャン・チェンと妻役の伊藤歩が談笑するシーンが出てくる。氏は94歳となられる現在も囲碁研究に余念がなく健在であられる。囲碁に関しての言及はないが木村伊兵衛の写真が好きだという監督が、伊兵衛の写真をイメージして作られた美術や小物衣装にいたるまでワダ・エミが担当しており日本人にはとても心地よい画面になっている。2007年の上海国際映画祭では最優秀監督・撮影賞を受賞した。呉清源は1928年(昭和4)に14歳のとき母と共に来日(当時は中国より日本のほうが囲碁は上だとされていた)囲碁界の重鎮、瀬越憲作(柄本明)はあまりの天才ぶりに<本因坊秀策の再来>と絶賛し何かと世話をする。本因坊秀哉(井上堯之)への挑戦権を得る。奇抜な打ち方で打ち破るが1935年、後ろ盾となってくれていた西園寺公毅(米倉斉加年)が他界。翌年に日本国籍を取得して棋院昇段試合で8勝全勝する。ところが結核を再発し富士見療養所に入る。女流棋士の喜多文子(松阪慶子)らが何かと面倒を見たり、親交のあった川端康成(野村宏伸)らも訪問している。木谷実(仁科貴)と<打ち込み十番碁>を行う。3日後に第一局終了。木谷は疲労困憊の余り昏倒。呉自身も一番過酷な対局だったと述懐する。その木谷と新しい打ち方<新布石>を提唱・出版する。この頃、反日派の脅迫文などが自宅に投げ込まれて、母(シルビア・チャン)と妹は帰国する。中国に帰国したとき李玉堂(リー・シュエチェン)の新興宗教<紅卍会>に入信していたが、それに似た長岡良子教祖(南果歩)の<璽宇教>の道場に通う。そこで女子学生だった中原和子(伊藤歩)と知り合い1936年に神前結婚式を挙げる。本因坊戦を広島で行うと言う瀬越に呉は道場のために囲碁を捨てると言い、激怒されている。その宗教団体とはトラブルがあり夫婦共に脱会した。長男が生まれた頃にバイクにはねられて入院。瀬越は息子を広島原爆で失いその後自殺する。その頃から呉も又精神錯乱状態になることもあったという。映画は呉の半生を淡々と綴っている。呉を演じたチャン・チェンは呉の家に泊まりこみ彼の癖などを習得し、周囲の人たちから若い頃の呉にソックリだと言われたという。呉清源は1914年(大正3)に福建省で生まれたが、彼の家は祖父が塩専売で大儲けをして福建四家の一つに数えられていた。父は役人だったが教育熱心で清源が11歳の時に亡くなっている。死ぬ間際に兄の呉浣には役人の教科書を次男の呉炎には文学書を三男の清源には棋譜を手渡したという。3兄弟は本当にその道に進んだのである。次男の呉炎も又健在で95歳だという。(「呉清源とその兄弟」という本に詳しく掲載されている。)囲碁の観戦記者だった作家の坂口安吾が「勝負師」という短編の中で、当時の名人たちに触れているがモミヂ旅館という場所で呉清源を囲んだ文人碁客座談会での彼について書いている箇所がある。当時の呉清源が宗教の広告塔にさせられて対局料を全てその宗教に渡していたというのだ。他の記者たちが呉の清廉な人柄を見て、その宗教団体に対して忌々しさを吐露していたらしいが、坂口安吾はこうも綴っている。「彼は孤独でさびしいに相違ない。」と・・・。その座談会にも不眠(宗教が眠らせないらしいのだが)で出席して服装などもボロボロの状態だったと作家は書く。だがほどなく、その宗教からも脱会するらしいと、他の記者たちが安堵しているというのも微笑ましい。(誰を批判もせず、ただ静かに生きる呉清源はずいぶん皆から好かれていたようだ)<私の人生には二つのことしかない。真理と囲碁だ>呉清源の言葉である。
真髄は調和にあり―呉清源 碁の宇宙 (図説 中国文化百華)真髄は調和にあり―呉清源 碁の宇宙 (図説 中国文化百華)
(2003/12)
水口 藤雄

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呉清源の著書は膨大だが、この表紙が一番近影。

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

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