- 2008/05/06 アヒルと鴨のコインロッカー(80点)
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伊坂幸太郎のこの小説は映画化は難しいだろうと言われていた。監督は「チーム・バチスタの栄光」の中村義洋。伊坂ファンとしてはジャン・リュック・ゴダールあたりに映像化してもらいたいのだが、読んだことのない人には十分に楽しめる映画だとは思う。だが前半が冗長なのでダレる人もいるだろう。監督は「私はちゃんと伏線を張りましたからね。」と主張するだろうが、伊坂幸太郎の世界はそんなもんじゃあない!と言いたい。「死神の精度」もかなり好きな小説なのだが、金城武が死神を演じると聞いてちょっとゲンナリしている。(大して期待は出来ないだろう。)伊坂ワールドの映画の中ではよく出来たほうでまずは及第点!なのだ。この話はネタバレになってしまうので多くを語れないが、後半になって見ている人は度肝を抜かれるであろう。「え〜っ!!」とマスオさんのようにのけぞるに違いない。一見ユーモラスだが、語っていることは深いのだ。
19歳の椎名(濱田岳は小さくて冴えない風貌だが、我々自身を体現している椎名という役柄にはピッタリである。)は仙台市にある大学に通うためにアパートを借りて引越してきたのだ。早速隣の住人に手土産を持って挨拶をしたのだが、何だか素っ気無い。荷物をほどいてドアの前でダンボールをまとめている椎名はボブ・ディランの「風に吹かれて」(有名な反戦ソング)を口ずさんでいると、後ろからいきなり男に声をかけられる。その男はもう一方の隣の住人で河崎と名乗るのだが、初対面なのにとても気さくに話しかけてくるのだった。その男は唐突に「本屋を襲わないか?」と椎名を誘う。当然、戸惑う椎名だった。河崎によると隣のぶっきらぼうな男はドルジといいブータンから来た留学生なのだという。ドルジにはアヒルと鴨の違いがわからない。だからドルジのために広辞苑を本屋から盗みたいのだという。なぜ買うのではなく奪うのか?河崎は椎名に<シャローンの猫>の話をするのだった。シャローンはレンガ色のアパートの五階にマーロンと一緒に住んでいた。ある日、階下に雨に濡れた子猫がおり、シャローンは仕事から帰ったばかりのマーロンに「あの子猫をとってきて欲しい」と言う。マーロンは子猫を拾ってタオルで雨水を拭いてやりシャローンに渡すのだが、シャローンは首をふりこういう。「私が欲しかったのはこんな猫じゃないの。あの雨に濡れた可哀相な子猫が欲しかったのよ。」と。その話をした後、モデルガンを見せてこれから一緒に本屋へ行こう!と半ば強制的に言う河崎にあがなえない椎名だった。椎名は本屋の外で見張りをしているだけでいいという。少しして河崎は本を持って出てくるのだが、それは「広辞苑」ではなく「広辞林」だった。
<人がうまく生きてゆくには、クラクションを鳴らさないことと細かいことを気にしないことだ>とか<重要なときには人は動かないが、どうでもいいときに人は行動する>など、ハッとする。二年前のドルジの恋人琴美(関めぐみ)の悲劇などを折込み、なぜ人はシャローンの子猫から目をそむけるのか?見て見ぬフリをする現在の日本人に警鐘を鳴らす。コインロッカーの訳は御自分の目で確かめてもらいたいのだ。
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