2006年ベネチア映画祭でサプライズ上映されて、他に「クィーン」など名作があったにもかかわらず審査員ら満場一致でグランプリを受賞した。中国はかってない建設ラッシュを経験しているのだが、中でも長江の三峡ダムは1993年に着工し、多くの歴史ある村が沈んだ。36歳のジャ・ジャンクー監督は山西省の出身だが当地に来てみて、懐かしい風景が急速に失われてゆく様を映像として収めておきたかったという。山西省で炭鉱夫をしていたサンミン(ハン・サンミン)は16年前に別れた妻子を探しに四川省奉節県フォンジュにやってくる。妻のいたという村はダム建設で沈んでしまっていた。彼は古いビルの解体作業の仕事につきながら妻子を探す。友人になった若者マーク(チョウ・ユンファの「男たちの挽歌」に憧れているのだ)に売買結婚であったことを見破られるサンミン。もう一人、山西省から来たシェン・ホン(チャオ・タオ)は2年間音信不通の夫グォ・ビンを探しにきていた。遺跡発掘現場にいる夫の友人ワン・トンミンに会い夫の消息を聞くシェン・ホン。最初、工場にいた夫は今は成功しており一緒に暮らす女性もいるようであると聞いたシェン・ホンは夫に会い(夫は以前なら踊らなかったダンスを踊る。2年の間にすっかり変ってしまった夫がそこにいた)好きな人がいるから離婚して欲しいというのだった。サンミンも又妻の居所を知る。妻は兄の3万元(450万円くらい)の借金のために貸主の船に乗って仕事をしていたのだった。サンミンは成長した娘の写真を眺めながら「一年待ってくれ。」という。彼は故郷に帰り日当の高い非合法の炭鉱で働くことにする。一年後に金を返済して妻子を迎えにくるためである。再び夫婦は別れ別れになるのだった。友人のマークに電話すると解体現場の瓦礫の下から着信音<善人の生涯に祝福あれ・・という意味の着うた>が聞こえる。サンミンは急いで仲間たちと瓦礫を掘り起こすがマークは死んでいた。仲間たちは日当50元(750円くらい)の解体作業よりサンミンのいう日当200元(3000円くらい)の非合法の炭鉱へ一緒に行くというのだった。サンミンは年間10人くらい落盤で死ぬ危険性の高い仕事だからよく考えてくれというが、翌日仲間たちはサンミンと一緒に船に乗り長江を渡るのだった。仲間の一人が言う。「サンミン!嫁さんの船は見えるか?」「ああ!見えるよ!」と答えるサンミンの姿が清清しい。人々は急成長する中国の荒波にもまれて、あちこちに流れる。10元札の裏に描かれた長江の名勝クイ門を眺めて過去を思い出すのだ。(お札の裏には中国各地の名勝が描かれている)切ない話である。貧しいけれど相手のことを思いやる男女が美しい。国の美しさが損なわれても、人情は変らないでいて欲しいという監督の願いが込められているようである。