音楽家にして歌手、バレリーナにして振り付け師、自分のバレエ団も主催する女流監督のサリー・ポッターが数々の名曲から想を得た作品である。原題は<嘆きの男>という意味だろうが邦題はビゼーの<真珠採り>の中のアリア<耳に残るは君の歌声>からとった。戦争に翻弄される人々の運命をロシア・イギリス・フランス・アメリカを舞台に綴った音楽映画である。(音楽が非常に重要な位置を占めている)オペラの新鋭サルヴァトーレ・リチートラが歌い上げる<トスカ>の名曲<星は光りぬ>やヴェルディの<身よ恐ろしい炎を>などたっぷり堪能できる。クロノス・カルティットの<クローズ・ユア・アイズ>やルーマニア・ジプシー・バンドであるタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの奏でる哀愁漂うジプシー音楽は素晴らしい!!1920年代、ユダヤ人の少女フィゲル(クローディア・ランダー・デューフがとても可愛らしい)は母が亡くなり、父(オレグ・ヤンコフスキー)と一緒に祖母が住むロシアの寒村に移るが、貧しい暮らしから脱出したい父親は新天地を求めてアメリカへ旅立つ。(父が娘を肩車して美しい歌を歌うシーンが素晴らしい)暮らしのメドがついたらフィゲルも呼び寄せるつもりだったが、戦争の混乱でフィゲルは祖母からはぐれてしまう。フィゲルはイギリス人の家族に助けられ、名前もスージーと名づけられてキリスト教徒として育てられるのだった。10年後、フィゲルことスージー(クリスティーナ・リッチ)は父を探す旅に出る。先立つものがいると父親譲りの美声を武器にパリでコーラスガールをはじめる。そこで知り合った美女で野心家のローラ(ケイト・ブランシェット)と友達になるが、ローラはその美貌で金持ちを捕まえようとしていた。そこに現れるイタリア人のオペラ歌手ダンテ(ジョン・タトゥーロ)は伊達男で才能もありローラは早速モーションをかける。だがダンテはムッソリーニを敬愛するアーリア人至上主義者。根っからのファシストだった。その傾向は第二次世界大戦が勃発するとエスカレートする。だがダンテはローラに首ったけだった。一方、ショーの馬係、セザール(ジョニー・ディップ)はジプシーだったがフィゲルと恋に落ちる。二人は深く愛し合うようになるが、根無し草のジプシーはファシストの台頭により逃げ回る運命になってしまうのだった。ユダヤ人のフィゲルも又パリにはいられなかった。二人は泣く泣く別れることに・・・・。フィゲルとローラは新天地を求めてアメリカへ渡ろうとするのだが、途中ドイツ潜水艦に攻撃されて撃沈してしまう。フィゲルとローラの運命は・・・?フィゲルは父に再会できるのか・・・?哀しいほどに美しい余韻が残る。