「バスキア」「潜水服は蝶に夢を見る」のジュリアン・シュナーベル監督の映画である。2000年のヴェネチア映画祭において熱狂的な絶賛の嵐を巻き起こしたという問題作!キューバで生まれた亡命作家レイナルド・アレナスの遺作「夜になるまえに」を映画化した。類まれなる詩的な感性を授けられた薄幸な詩人であり作家でもあったレイナルド・アレナスは1943年7月16日に産まれたが、父に捨てられた母は3ヶ月のレイナルドを連れて実家の牧場に身を寄せた。自らを<失敗の果実>と呼ぶレイナルドは祖父と不幸な女たちの吹き溜まりだった家で育つ。貧しいが感受性の強いレイナルド少年には天国だったという。詩の才能があることを学校の教師から聞いた祖父はレイナルドが詩を刻み付けた木を全部切り倒してしまい、牧場を払ってオルギンで食料品店を営むようになる。オルギンは都会で20万人のゴミをたった一台の収集車で集めるような雑多な都市だった。14歳の時レイナルドは独裁政権を打倒すべくカストロ革命軍に入る。(途中、ヒッチハイクをしていて荷馬車に乗せてもらう男クコ・サンチェスにショーン・ペンが出演)1959年1月に革命も一段落し、レイナルド(ハビエル・バルデム)はハバナ大学で農業会計士になるべく入学する。ナレーター募集に応募して自作の詩を読み国立図書館の職を得る。20歳の時、処女作「セレスティーノ」を応募して佳作に選出される。その時、著名な作家ホセ・レサマ=リマに出会い毎回5冊の図書を借りる。(最初は「白鯨」「宝島」「失われた時を求めて」「変身」「感情教育」の5冊だった)リマはゲイの友人で詩人のビルヒリオ・ピニューラを紹介してくれる。レイナルドはピニューラからタイプの打ち方と編集を学ぶ。ゲイだったレイナルドにはペペ・ロペスという恋人も出来たが、カストロ政権下ではゲイは迫害の対象となった。身の危険を感じたレイナルドは画家のホルヘ・カマチョに第二作「めくるめく世界」をフランス出版できるよう原稿をたくすのだった。1973年に浜辺での口論が元で刑務所に入れられるが脱走、レーニン公園にいるところを再度逮捕され1974年悪名高いモーロ刑務所に送られる。(ここでは拷問や悲惨な経験をしたみたいだが映画ではあまり出てこない)受刑者のために手紙を代筆してやりタバコや鉛筆、紙を入手して執筆を続けた。オカマのボンボン(ジョニー・ディップ)に1000本のタバコと引き換えに5枚ずつの原稿をたくす。1980年ビクトル中尉(ジョニー・ディップ二役)に脅かされてペンを捨てることを誓約させられてやっとのことで出所。カストロは同性愛者・精神病患者・犯罪者などを革命分子のないものとみなし国外追放しようとする。生涯の友であり恋人のラサロ(オリヴィエ・マルティネス)とアメリカに亡命。その直後にエイズに罹っていることが発覚。闘病生活が始まる。ラサロはドアボーイとなって働きレイナルドを支えた。1990年12月7日大量の鎮痛剤を服用し自殺した。享年47歳。その3年後「夜になるまえに」が出版される。ハビエル・バルデムは13キロ減量してこの役にあたった。知性を感じさせる俳優である。美しく孤独な魂は死後、幼き日に過ごした地オリエンテに帰ったに違いない。