「椿三十郎」の前編と言われてはいるが別個に見ても良い作りになっている。主人公は偽名を使っているのであり本作では「桑畑三十郎だ・・とはいってももうすぐ四十郎だがな!」と同じ台詞を言うのだ。原作はダシール・ハメットの「血の収穫」。上州は国定忠治など侠客の輩出した土地柄だが、空っ風の吹きすさぶ宿場町が舞台である。クリント・イーストウッド主演、セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」はこの作品をパクッたとして有名であるが、東宝は訴えたが黒澤自身は大いに面白いと言ったそうである。「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」などはこの2作を足したようなものである。しかも出来が悪い。用心棒スタイルといい、望遠レンズによる対立シーンといい、すれ違いざまにしばらく間を置いて倒れる演出などは本作から始まった。今みれば当たり前のスタイルだが公開当時はとても斬新だったであろう。キャラクターがしっかり描けているのにも驚く。ピストルを持つニヒルな新田の卯之吉に仲代達矢、ちょっとマヌケなキャラ新田の亥之吉に加東大介、居酒屋の権爺に東野英治郎、名主の多左衛門に藤原釜足、弱い用心棒本間先生に藤田進、新田の用心棒かんぬきに羅生門網五郎(台湾出身の新高山という力士。身長203cm体重125キロ。プロレスラーとして活躍しておりジャイアント馬場によく間違われたという。映画によく出ていて本作でも三十郎はボコボコにされる)
ゴーストタウンのように寂れている宿場町にやってきた三十郎は酒屋の爺から2人の親分が対立しているのが原因だと聞く。「早く出て行け!」と忠告する爺に「そいつは面白れや!」と言いしばらく逗留するというのだった。馬目の清兵衛(河津清三郎)のところへ行き50両で用心棒になってやると言うのだが女房(山田五十鈴)が強欲な女で「利用して殺せば50両助かる」というのを聞いて、今度は新田の丑寅(山茶花究)のところへいく。懐手で肩をコキコキさせた三船敏郎が自然体でカッコイイ!子役で夏木陽介が出演していたのに驚いた。ちなみにブルース・ウィリスの「ラストマン・スタンディング」は本作のリメイクである。名前もジョン・スミスと偽名臭いのである。