なぜこの映画がカンヌ映画祭で賛否両論になるのか?物議をかもすのか?わからない。キリスト教世界では近親相姦は罪悪だから?わが国の近親婚の記録は古く特別なことではなかった。近親憎悪もあればその反対もあるだろう。遺伝子レベルの問題があるので神后皇后の時に禁止されている。(上通下通婚おやこたわけ・馬や牛、鶏などとの交わりも禁止している)だが万葉集や古事記では兄弟姉妹や親子の肉体関係はフツーに記されている。自己愛が近親愛に変ることもあるだろう。原作はナタリー・ロビンスの「SAVAGE GRACE」(優美な残酷さ)。「恍惚」などのトム・ケイリンが監督をした。「美しすぎる母」という題名はどうかと思う。母が美人だから近親相姦になったのではなく、合わせ鏡のようにこの母子が似ていたからである。喪失感も孤独も痛みも全て共有し依存していた。この一家は1907年に曽祖父レイ・ベークランド博士が人工樹脂ベークライト(プラスティック)を発明し巨額の富を得たのだ。その孫に当るブルックス(スティーヴン・ディレイン)の玉の輿に乗ったのがバーバラ(ジュリアン・ムーア)である。母バーバラは貧困家庭で育ち、その美貌と社交性で大金持ちのブルックスと結婚したのである。そして2人の間にはアントニー(エディ・レッドメイン)という息子が誕生する。アントニーは母に溺愛されて育つ。だが夫婦間は冷え切っていた。(育ちの違いが否応無く露呈してしまう)1968年一家はスペインのカダケスに移るが翌年、マジョルカ空港でバーバラは夫ブルックスと息子の恋人だったブランカ(エレナ・アヤナ)が一緒にいる所を目撃してしまう。(息子はバイセクシュアルでありジェイクという男の恋人もいた)バーバラはひどく傷つき、ウォーカーと呼ばれる有閑マダムたちの相談役サム(ヒュー・ダンシー)を呼び、一時は元気を取り戻したかに見えた。バーバラは自殺をしようとするが、アントニーに発見されて一命をとりとめる。2人きりで旅をするバーバラはアントニーと関係を持つのだった。1972年11月17日、関係を持った日にアントニーは母バーバラを刺殺する。彼は心神耗弱としてブロードムアー精神病院に収容されるが1980年7月に釈放されている。母方の祖母ニニ・デーリーに引き取られるがその祖母も一週間も経たないうちに刺殺。(だが一命はとりとめる)NYイーストリバーのライカーズ島(刑務所というより留置場のような場所)に送られて、プラスティックの袋をかぶり自殺している。愛が憎悪や嫌悪に変る瞬間というものがあるが、昨今の近親同士の殺害を見ているとそう異常な話でもない。ジュリアン・ムーアの着るシャネルやジバンシーのオートクチュールも見ものである。