ご当地フランスで100万人を動員したという映画である。「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」の脚本を書いたエリック・エマニュエル・シュミットの初監督作品であるが、勿論「イブラヒムおじさん〜」の方が格は上であるが、本作も又シュミットらしい良さが滲み出ている。ベルギーに住むオディット・トゥールモント(カトリーヌ・フロは今も美しいが、若い頃の彼女は独特な雰囲気のある女優だった)は20年前に夫を亡くして以来、昼間はデパートの化粧品売り場で、夜はレビュー用の羽飾りを作る内職をして2人の子供を養育してきた。長男のルディは美容師をしていたがゲイでいつも違う美青年をアパートに連れ込んでおり、長女のスー・エレンは職探しをしているが見つからず、2年前から恋人?の大男がアパートに入り浸っているのだがオディットは怒る様子もない。オディットの唯一の楽しみはパリ在住のロマンス作家バルタザール・バルザン(アルベール・デュポンテル)の小説を読むことであった。作家のサイン会で自分の名前がちゃんと言えず落ち込むオディットにルディはバルタザールに手紙を書けばいいのにと言う。一方バルタザールは黒人の美人広報と浮気をしていたのだが、彼をTVでこき下ろした評論家のオラフ・ピムスと妻が不倫していたことを知り、ショックを受ける。そうなると人気も下がる一方でサイン会にもファンは思うように集まらない。バルタザールは自分の才能や人生そのものに落胆し自殺未遂をする。そんなバルタザールを救ったのはオディットの手紙だった。行き場のないバルタザールはオディットの安アパートへ転がり込む。心が舞い上がるオディットだったが、作家のために優しい励ましの言葉で彼を包んであげるのだった。バルタザールはオディットに愛を告白するがオディットはウンとは言わない。再三の申し出にも頑としてなびかないオディットだった。バルタザールの妻と編集者が彼を迎えにくる。オディットはバルタザールを深く愛するが故に、彼の素晴らしさを2人に説き、妻の元へ帰るよう言うのだった。自分の分を知り、決して背伸びせず、欲を出さないオディットは聖母のように慈愛に満ちた女性である。(彼女の半径50メートル以内にキリストのような青年がいるのも不思議である)バルタザールの幸福を優先するオディットは昏倒してしまう。(キリスト青年もなぜか倒れている)バルタザールはオディットの愛の深さに初めて気づくのだった。取った者やった者勝ちのような現在の風潮の中でフランスからこういった映画が出るのは実に好ましいことである。