1924年頃、実際に起こった数件の夫殺し事件を取材したシカゴ・トリュビーン紙の女性記者だったモーリン・ワトキンズの戯曲が原作である。映画化は3度目(1929年に日本でも上映されたサイレント映画「市我古」、1942年のジンジャー・ロジャース主演のコメディ・ミュージカル「ロキシー・ハート」があり後者の方はなかなかの出来であるらしい。この映画権を売却した作者は広大な屋敷を手に入れている。)だが、作者の意向もあり舞台上演権は生前に売却されることはなかった。舞台化を目論んでいたグウェン・ヴァードンは彼女の遺族から上演権を買った。1969年、フレッド・エブとジョン・カンダにより作曲・作詞されボブ・フォッシーにより振り付け・演出された舞台<シカゴ>は連続898回のロングラン上演を打ち立てる。法曹界の堕落とマスコミの無意味さを鋭く突いた本作は再演を繰り返すごとに時代を風刺した。1969年の再演ではヴェトナム戦争とウォーターゲート事件を1996年の再演ではO・J・シンプソン事件と大統領の愛人モニカ・ルインスキーを描き好評を博す。時代を超えて<悪名と名声の境界の曖昧さ>を歌と踊りで表現する演目の人気は衰えない。ボブ・フォッシーも又映画化を熱望していたが、1987年に亡くなっている。「蜘蛛女のキス」「キャバレー」などの振付師でボブ・フォッシーを敬愛してやまないロブ・マーシャルは「RENT」の監督を打診されていたが、「シカゴ」を映画化したいと答えて実現にこぎつけた。脚本に「ドリームガールズ」の監督ビル・コンドンを起用した。楽曲の素晴らしさもさることながら、20世紀最高の振付師ボブ・フォッシーの振り付けはため息がでる。映画は2つの部分構成からなりロキシーの現実と空想の世界を行き来する。空想部分に出てくる<オニキス・シアター>のデザインは当時のポスター画で有名なレジナルド・マーシュの絵を資料にして、狭い圧迫された空間を作り出しており、画面に集中できる。さすがにショービジネスのメッカ、ブロードウェイ・ミュージカルだと感心する。ヴェルマ・ケリーを演じたキャサリン・ゼタ・ジョーンズの本職はミュージカルだとは聞いていたのだが、さすがに貫禄の歌唱力と存在感である。弁護士ビリー・フリンを演じたリチャード・ギアは以前にも書いたと思うが初舞台は「グリース」であるから確かなものである。(この役は当初トラボルタに打診していた役だったが、断ってきたのだ)他にも刑務所の女看守ママ・モートンにラップ歌手でグラミー賞受賞している実力派クィーン・ラティファ。(さすがに迫力がある)ロキシーの頼りない夫エイモスにジョン・C・ライリーと名バイプレーヤーが固めている。ロキシー・ハートに全く踊りと歌は素人のレネー・ゼルヴィガーが2ヶ月の特訓でよくここまで!というくらい頑張っている。(ベティ・ベープのようなコケティッシュな魅力で歌唱力をカバー)おすすめは刑務所の中で6人の女性殺人犯による「刑務所のタンゴ」である。6人の国籍も人種も違う女たちが歌い踊るシーンは必見!!裏切った男を殺害し、泣き寝入りをするどころか悲劇のヒロインを演じ、マスコミを味方につける力強い女性の話であるが、構成力といい振り付けの素晴らしさといい第一級のミュージカルであることには間違いない!本作はアカデミー賞を6部門制覇!制作費は4500万ドルだが興行収入はその8倍の3億6000万ドルを弾き出している大ヒット作である。