1996年E・アニー・ブルーがピュリッツアー&全米図書のW受賞をしたベストセラーを「サイダー・ハウス・ルール」や「ショコラ」のラッセ・ハルストレム監督が映画化した。本作に登場する人物はペタルやウェイヴィなど変わった名前が多いが原作者が電話帳から選りすぐった変名であるらしい。主人公のクオイルという名だが<ロープのとぐろ巻き>という意味らしく作者がロープ結びの本を見ていて気に入ったというのだが、作者いわく「シンプルだが多くの可能性を秘めている。」ということらしい。。クオイル(ケヴィン・スペイシー)は父親から厳格に育ったせいか無気力な男だった。新聞社のインク係という単調な仕事に身を置いた彼だったが、ある日とびきりの美女に出会う。女はペタル(ケイト・ブランシェット)といい、クオイルのプロポーズに承諾する。だが幸福は束の間だった。ペタルは女児バニーを産んだが育児放棄して家出してしまう。クオイルは娘バニーを育てるのだが、警察からペタルが男と事故死したという知らせが入る(ケイト・ブランシェトは死体になっても凄みのある美しさで圧倒する)。その上ペタルは娘を養子縁組会社に売り飛ばしていたのだ。ようやく娘を取り戻したクオイルだったが、追い討ちをかけるように両親の自殺の一報が入る。失意のどん底にいたクオイルの元に叔母アグニス(ジュディ・デンチ)がやってきて祖先の故郷に帰ろうと言うのだった。クオイルはバニー(ゲイナー三姉妹が演じているのだが三つ子なのでほとんどわからない)を連れて、カナダ北部のニューファンドランド島に行く。そこは5月でも雪が残る極寒の地だった。アグニスの実家は北風の吹きすさぶ岬の岩場に建っているボロ家だったが3人はとりあえず、そこに腰を下ろすことに。クオイルは早速、地元新聞社に職を得る。編集長のジャック(スコット・グレン)は漁にばかり出ていてほとんど社にはいないし、古株のタート(ピート・ポスルスウェイト)は取っ付き難い男だ。家庭欄とコゴシップ記事担当のビリーやイギリス人のナットビームなど変り種がそろった新聞社でクオイルは交通事故の記事が編集長の目にとまりコラム<シッピング・ニュース>(港湾ニュース)を担当させてもらう。島で唯一、託児所を営む未亡人ウェイヴィ(ジュリアン・ムーア)とも知り合うクオイル。ウェイヴィは女手一つでダウン症の息子を養育していた。クオイルは自分の祖先が島を拠点としていた海賊だと知る。(それも悪行の数々を行った)そして島民に追い出されて岬の岩場に住むようになったのだ。先祖たちは家を曳いて岩場まで来たという。初めて知る自分のルーツにクオイルは父の厳しい表情の片鱗を重ね合わせる。叔母は48年ぶりにこの地に戻ってきたのだが、叔母にも又隠された哀しい秘密があったのだ。そしてウェイヴィにも・・・・・。この話は都会で傷ついた一人の男が自分のルーツを知り、人間としての誇りに目覚めていくという物語なのである。虫けらのように思っていた自分の人生が少しずつ光を帯びてゆく様は感動する。やがて極寒の地にも美しい春が訪れるのだった。