岩下俊作の「冨島松五郎伝」(原作は1940年の直木賞候補にあがった)を新国劇が上演し、この頃から「無法松の一生」というタイトルになった。脚本を伊丹万作(伊丹十三の父親)、監督を稲垣浩で映画化。戦前に坂東妻三郎の主演で戦後に稲垣自身が三船敏郎を迎えてリメイクした。(白黒とカラーの移り変わりの時期であったので、自作をカラーで撮り直すということを多くの監督がやったのだ)稲垣浩監督は1955年の「宮本武蔵」でアカデミー外国語賞を本作でヴェネチア映画祭グランプリを受賞しており、海外でも評価の高い監督である。冨島松五郎(三船敏郎)は人力車引きを生業としていたが、破天荒な男で九州小倉でも名高い暴れん坊だった。(この辺りのエピソードは三船らしさが出ており面白い)ある日、一人の少年が他のガキ大将にいじめられており、怪我をする。その子を家に送り医者に連れていったのが縁となり、その父親で軍人大将の吉岡小太郎(芥川比呂志)と懇意になる。だがその吉岡も体調を崩してあっけなく亡くなってしまう。松五郎は未亡人になった良子(高峰秀子)と息子、敏雄を陰ながら助けるのだった。敏雄も松五郎にすっかりなつく。この映画は見てもらうしかないのだ。日本人の美徳がよく描けている良質の作品であるから、じっくり味わってもらいたい。小倉の旅籠(木賃宿のようなところ)<宇和島屋>のおとら婆さんに飯田蝶子、その宿で下働きをしている頭のちょっと足りないぼんさんに怪演男優として有名な大村千吉、松五郎のケンカ仲裁に出張ってくる結城豊蔵に笠智衆、オイチニといいながら薬を売る男に有島一郎、居酒屋のおやじに左卜全、巡査に稲葉義男など当時の名優が顔を揃えている。現在ではこれだけの俳優は揃わないだろう!無法松の一生こそが日本人の真髄と言っても過言ではなく、いつの間に日本人はこの美徳を失ってしまったのだろう!!