「雲の中で散歩」などのアルフォンソ・アウラ監督(「サボテン・ブラザーズ」などに出演している俳優であった人である)の1992年度作品である。原作・脚本はアウラ監督の妻で作家のラウラ・エスヴェル(理想的な夫婦である。原作は12章からなり章の始めに料理レシピが載せられている。)メキシコ、リオ・グランデ川の近くの大農園。末娘のティタ(ルミ・カヴァソス)は台所で生まれて料理女ナチャ(アダ・カラスコ)に育てられるる。15歳の時にペドロ(マルコ・レオナルティ)と結婚の約束をする。成長したペドロはティタを嫁にもらおうとやってくるが、因習深い母親エレナ(レヒーナ・トルネ)はティタは結婚せずに母親の面倒を見なくてはならないのだと言う。代わりに姉のロサウラ(ヤレリ・アリスメンディ)との結婚を勧める。ペドロはティタの傍にいたいがために結婚を承諾する。ティタは料理を教えてくれたナチャが亡くなったしまい悲しみの余り涙に暮れて<杏子のウェディング・ケーキ>を作ったので、それを食べた披露宴の客たちはおいおい泣き出す。この作品は人の思いが料理を通して相手に影響を及ぼすという話が次から次へと繰り出されて、いかにもメキシコ文学らしい恐ろしくもエロティックな幻想譚になっているのだ。たとえば冒頭ティタが生まれるときに洪水のような涙を流すが、その涙は床に塩となり袋に詰めて長く料理に使われたというのだ。又ペドロがティタに薔薇の花束を贈るのだが、ティタはそれを<赤い薔薇ソースの鶉>という料理にする。それを食べた次女のヘルトゥルデスは体がほてりその熱気をさまそうとシャワーを浴びるが、熱すぎて小屋が火事になってしまう。結果次女は革命軍の恋人の元へ出奔してしまうのだ。それを食べたペドロはそのソースに織り込まれた情熱にティタと性的に結ばれると同様の至福を覚えるのだ。やがてロサウラは身ごもり子供を出産する。その子供を育てるのもティタの役目だった。何かとティタのジャマをしていた母が亡くなり、再びペドロ夫婦と一緒に暮らし始めるティタ。ロサウラが亡くなりやっと2人は肉体的に結ばれるのだった。ペドロの娘エスペランサと医師ジョン・ブラウン(彼はティタが好きで求婚するが断られる)の息子アレックスの結婚式の日。ティタは<チリ・エン・ノガータ>を作るのだった。。安心したペドロとティタは再び結ばれるがその刹那、幸福の絶頂に達したペドロはそのまま息絶える。ティタも又そのままペドロの腕の中で死んでしまうのであった。非常に美しく官能的な描写である。原題の<COMO AGUA PARA CHOCOLATE>とは沸騰寸前!という慣用句であるらしい。言い得て妙である。