ジャン=ピエール・ジュネ監督の「アメリ」はベスト5に入る名作だが「ロング・エンゲージメント」も又、実によく出来た名作である。セバスチャン・シャプリゾの原作にジュネが魔法の粉をふりかけたような本作はフランス映画にしては破格の55億円をかけた大作であるが、その価値は十二分にある。ミステリー仕立ての恋愛映画ともいうべき本作ではあるが、第一次世界大戦のソンムの塹壕戦を忠実に再現しており、やはりジュネの美術スタッフは優秀である。マチルドの住む家を含む周囲のローケーションなど美の極みである。目にもよし、謎解きの面白さもあり、第一級の映画であることは間違いない。1917年1月6日、ソンムのビンゴ・クレビュスキュル塹壕に5人の兵士が連行されてやってくる。家具職人でドイツ兵のブーツを履いているバストーシュ(ジェローム・キルシャー)、国鉄溶接工のシー・スー(ドニ・ラヴァン)、農夫で一番勇敢なブノワ・ノートルダム(クロヴィス・コルニャック)、コルシカ生まれのペテン師で刑務所から志願したアンジュ・バシニャーノ(ドミニク・ベテンフェルド)、そして若い新兵(矢車菊と呼ばれる)で過酷な戦場で精神がおかしくなっているマネク(ギャスパー・ウリエルはオーディションでもダントツだったという)だ。彼らは戦線離脱したくて故意に指や手に怪我を負ったとして軍法会議にかけられ死刑判決を受けるのだった。ビンゴに連れてこられた5人は戦線の中間地点に放り出される。次々とドイツ機や敵のあるいは味方の狙撃に倒れる5人。戦死通知が届いたもののマネクのフィアンセ、マチルダ(オドレイ・トトゥ)はにわかには信じられずに、独自に調査をする。マチルダは幼い頃に両親をバス事故で亡くして以来、叔父夫婦のシルヴァンとベネディクトに養育されていた。5歳の時に小児麻痺にかかり足を引きずって歩くようになる。だが幼馴染のマネクがそんなマチルダと仲良しになってくれるのだった。2人はいつしか恋に落ち、婚約をしたのだ。1920年6月、マチルダはエスペランザ元伍長から手紙を受け取る。彼は病院に入院しており5人の最後を知っているというのだ。そして彼から5人の遺品を託されるのだった。5人が最後に撮った写真・ノートルダムが妻に宛てた手紙の写し、アンジュの懐中時計・バストーシュのハガキなどを元に調査を開始する。両親の遺産を管理してくれるル−ヴィエール弁護士に頼んで調査費用を出させたマチルダは、ジェルマン・ピール(ティッキー・オルガドはこれが最期の出演)探偵に依頼するのだが、ピールは破格の安価で引き受ける。なぜなら彼にも足の悪い小さな娘エレーヌがいたからだ。この映画はどの場面も美しい陽光に溢れている(対して塹壕や戦場の場面は灰色にくすんでいる)。マチルダはマネクと再会することが出来るのだろうか?美しい謎解きにあなたの頬を涙が伝うだろう。