ダニエル・ウォレス原作の「ビッグ・フィッシュ父と息子のものがたり」をティム・バートン監督が映画化。ダニエル・ウォレスという作家は不思議な語り部である。「西瓜王」という作品も奇想とホラ話が散りばめられた何とも変わった話だ。ビッグ・フィッシュ自体がホラ話を意味するのだ。人生いいことばかりではない。嫌なことや辛いことの方が多いものだが、作り話やホラ話が時には人生を豊かにすることがある。そういったものがあるからこそ人間は日々生きていけるのだろう。(想像力があるからこそ人は人の痛みを知り、人生の喜びを知るのだから)映画も書物も美術もマンガもあるとないでは大いに違う。ビッグ・フィッシュは<夢見ること>の大切さを説いた名作である。ティム・バートン監督はこの前年に父を亡くしたと同時に始めての息子を授かった。思い入れの深い映画となったようだ。ウィル(ビリー・クラダップ)はパリで物書きになっておりカメラマンの妻ジョセフィーヌ(マリオン・コティヤール)と暮らしていた。だがアメリカ、アラバマの実家から一本の電話がかかってくる。母サンドラ(ジェシカ・ラング)からだった。父エドワード(アルバート・フィニー)の容態が良くないという。ウィルは自分の結婚式以来、父とは会っていない。父は社交的な性格で話上手だがウィルは父のホラ話が嫌いだった。それで結婚式のパーティでホラ話をする父に食ってかかり、それから疎遠になっている。だがウィルは妻を伴い帰郷するのだった。若い頃の父エドワード・ブルーム(ユアン・マクレガー)はアシュトンの田舎町に生まれた。父の子供の頃の話はその片目に自分の死ぬ姿が見えるという魔女や、巨人カール(マシュー・マッグローリー)と18歳で出会ったこと、カールとの旅でスペクターの町に迷い込んだこと。この町で詩人のノザー・ウィンズロー(スティーヴ・ブシェミ)に出会ったこと。(このスペクターは幽霊などの意味を持つ。ウィンズローが詩を作れないように楽しく良い町なのだが、クリエーターが陥りやすいマンネリの世界のようだ。耳の痛い人もいるのでは・・・)そしてサーカスで若い頃のサンドラ(アリソン・ローマンは「マッチスティック・メン」の少女役の女優)に一目惚れしてしまう。彼女の情報を聞きたくてサーカス団長エーモス(ダニー・デビートが満月に狼男になり可愛い。)にタダ働き同然にこき使われる。サンドラがオーバーン大学にいることを知ったエドワードは婚約者がいたサンドラに猛烈アタック!五つの州の花屋から届けさせたというサンドラの好きな水仙をキャンパス中に植えるのだった。結婚まもなく召集令状が届いたエドワードは従軍するが、パラシュート部隊に配属されて朝鮮の敵地に降下してしまう。下半身は一つだが上半身は二人の姉妹シンガーに助けられて、無事帰国するのだった。子供ウィルも誕生しエドワードはセールスマンになってアメリカ各地を転々とする。そして不動産会社を立ち上げてスペクターの町も買い上げるのだった。相変わらずの荒唐無稽な話が続くのだが、ウィルは病床の父の容態が悪くなって病院に搬送されたときに父とともに父の臨終を脚色しようと思い付く。父と息子は父が大きな魚となって水に帰ってゆく話を紡いだ。父の葬式の日、父の話に出てきた人物がみなやってくる。普通の人の姿で。だがウィルには誰がどの人かわかるのだった。父の話は全て嘘なのではなかった。だが面白おかしく話しをすることで自分の人生を彩ったのだ。それは大いなる知恵ではないか・・・全然自分とは似てないと思っていた父だったが、産まれてきた息子に大きな魚の話をする時大いなる父の血が流れていることを感じるのだった。いい話である。ラストは涙があふれる。