時はビクトリア王朝後半、現在のように貧富の差が広がりつつある不穏な時代にその名をとどろかせた殺人鬼切り裂きジャック!<フロムヘル>とはこの殺人鬼が警察宛にだした手紙の冒頭に用いられていた言葉である。そしてその後に<後世の人々は語るだろう。20世紀を生んだのは私だと。ジャック・ザ・リパー>と記した。監督は双子のアルバート&アレン・ヒューズ兄弟である。原作は1999年出版のアラン・ムーアによるグラフィックノベルである。この作品の凄いところは出てくる人物が全て実在する人物であり、ビクトリア時代のロンドンを忠実に再現していることである。この殺人鬼は1888年8月31日〜11月9日までの10週間でわかっているだけでも5人の娼婦を惨殺した。貧民街イーストエンドのホワイトチャペル地区は主にユダヤ人と娼婦の住む界隈だった。アバーライン警部(ジョニー・ディップ演じるこの警部もまた実在するが映画のように予知夢を見たりはしなかったし、このような死に方はしていない)は今日も阿片窟で白日夢を見ていた。娼婦の殺される夢だった。部下のゴッドレイ巡査部長(ロビー・コルトレーン)がアバーラインを起こしにやってくる。「警部!おきてください!事件です。娼婦が殺されました。」アバーラインはゆっくり起き上がり「ペチコートは血まみれか?」とゴッドレイに聞くのだった。現場に行くと陰部を切除された娼婦のマーサの死体があった。「この女じゃない!」アバーラインは他にも違う娼婦の遺体が発見されるだろうと思った。一方、美しい娼婦メアリー・ケリー(ヘザー・グレハム)は以前の娼婦仲間アンの赤ちゃんアリスを預かっていた。メアリーらは地元のヤクザ、マックィーンに払う上納金の段取りがつかないので途方にくれていた。そこへ裕福な画家アルバートと結婚したアンがやってきて、夫が戻ってくるので一日だけアリスを預かって欲しいというのだった。その代わり上納金はアルバートに出してもらうと約束する。だがメアリーらはアルバートとアンが下着姿のまま身なりの良い紳士たちに誘拐拉致されてしまう所を目撃するのだった。メアリーはこのことをアバーラインに相談する。二人は出会ったときから惹かれあうのだった。このアルバートとはヴィクトリア女王の孫クラレンス公(現エリザベス女王の大叔父にあたり、この人もまた犯人の候補に挙がっている)のことである。この人物は1892年にインフルエンザで死んだとか梅毒で亡くなったとか言われているが毒殺説も浮上している。クラレンスと娼婦アンはカソリック式の結婚式を挙げて(イギリス国教会ではなく)娘をもうけた。メアリー・ケリーはこの子供をひそかにアイルランドで養育した。王立ロンドン病院の王室主治医ウィリアム・ガル卿(イアン・ホルム)もまた犯人ではないかと思われていた。御者ネットリー(ジェイソン・フレミング)もまた実在した人物である。一つの推理を元に映画化されているので面白い!!