<1948年生まれのブッカー賞も受賞したことのある小説家イアン・マキューアンの「贖罪」は、実に嫌な少女を描いていて好きではない。映画では語られないが、この少女が77歳の老女になり「絶対権力を握った存在、神でもある小説家がいかに贖罪を達成できるのか?」ということに言及する。(確かにこの少女はあらゆるものをミニチュア化しており、神のごとく俯瞰している)<絶対権力><神><贖罪の達成>という言葉を用いている自体、この少女は60年以上経ても本質は変っていないとワタシは感じる。脳血管性認知症を患っているからには罪の意識もなくなるだろう。作家は第二次世界大戦をさして贖罪という言葉を使っているのだろうが、贖罪が達成されるなんてことはない。「プライドと偏見」のスタッフとジョー・ライト監督が映画化した本作はアカデミー作曲賞などを受賞した。第二次世界大戦前のイングランド。政府高官の娘ブライオニー・タリス(シアーシャ・ローナン)は作家志望の少女。姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイはウィノナ・ライダーとともさかりえを足して2で割ったような顔であまり好きではないが「パイレーツ・オブ・カリビアン」のような役柄のほうが似合うのでは?)はケンブリッジ大学を卒業したものの進路が定まらないでいた。13歳のブライオニーは使用人の息子ではあるが学業優秀でタリス家が学費を出してケンブリッジで医学を学んでいるロビー・ターナー(ジェームス・マカヴォイはこういった文芸物でも演技力が秀でている)のことが好きだった。ロビーを試すために溺れるフリをしてロビーを怒らせたこともあるのだ。だがロビーは姉のセシーリアと不穏な空気をかもしており、ロビーの前でセシーリアが下着姿になって噴水に飛び込んだり、ロビーが誤っていれた手紙<君の女陰カントにキスを>と書かれた便箋を読んだり、図書室でロビーと姉が絡み合っていたりする光景を目にしてしまう。その上、母親が駆け落ちしたために預かっている従兄弟たち。中でも赤毛美人(小説では美人となっているが映画ではそうでもない)のローラ(ジュノ・テンプル)は偉そうで、ブライオニーにとっては鼻につく存在である。(ブライオニーもたいがいだが、このローラという少女も嫌な人間である)兄のリーオン(パトリック・ケネディ)が友人ポール・マーシャル(ベネディクト・カンバーバッチ)というチョコレート工場を経営している男を連れ帰る。兄の歓迎のために戯曲「アラベラの試練」を執筆したブライオニーだったがその劇も出来そうにない。夕食会の時にローラの双子の弟が家出をしてしまい、総出で捜索するが、ブライオニーはローラが男に襲われている現場を見てしまうのだった。ローラは誰かわからなかったと言うが、ブライオニーはロビーだったと警官に証言する。何も知らないロビーは双子を連れ帰るが、その場で逮捕され3年間投獄されてしまう。そしてロビーは刑務所から出兵するのだった。セシーリアは看護士になっていたがロビーに「ずっと待っているから必ず帰ってきて!」と言う。一方自分の過ちからロビーを冤罪に追い込んだブライオニー(ロモーラ・ガライはこういった役柄がよく似合う)は贖罪のために大学へは行かず看護士になっていた。ロビーは激戦のフランス戦線に送られるのだった。1940年撤退の最終日6月1日にロビーは敗血症で亡くなる。数ヵ月後の10月15日セシーリアも又空襲を逃れるために地下鉄の構内に避難していたところを洪水により亡くなった。一人生き残ったブライオニー(バネッサ・レッドグレーブ)は77歳になって遺作ともなる「噴水の二つの影」という小説をつぐないに執筆したのだ。