2006年ベルリン映画祭グランプリを獲得した「サラエボの花」は1974年生まれの女性監督ヤスミラ・ジュバニッチの長編デビュー作だが、実によく撮れている。ショートカットの美人だが、ボスニア紛争が勃発したころ18歳だったと思われる。厳しい表情に12年前の惨状が刻みこまれているようだ。政治的な事柄は「カルラのリスト」にも書いたが、私たちに伝えられる情報は極めて少ない。「あなたにならいえる秘密のこと」でも、この地域の女性がどんな目に遭ったか語られるが、本作はセルビア人兵士数人に毎日のようにレイプされた女性が出産をし、この12年間どんな思いで子供を養育してきたかを語る。セルビア人からは何の謝罪もなく慰謝料ももらえないボスニアの女性たち。今もなお消えぬ深い傷を負い貧しい暮らしの中を生きる女性たちにスポットを当てる。民族浄化と称して今まで幾人の男たちが女性を陵辱したことか!!(日本人も又例外ではない。中国大陸や朝鮮半島で日本兵がしたこと、満州の地で日本人女性がロシア人にレイプされたこと、敗戦後の日本国内においてアメリカ兵が日本人女性にしたことなど枚挙に暇が無いが)今も尚、このような悲劇は地球上のどこかで行われており、無くなることはないのである。ボスニア紛争では1992年〜1995年の間に20万人が亡くなり、200万人の難民が生じたという。グルヴバヴッチ地区(サッカーのオシム監督もここの出身である。あまり紛争については語らない監督であるが、随分と辛い経験をしていると思われる)に住むエスマ(ミリャナ・カラノヴィッチ)は12歳の娘サラ(ルナ・ミヨヴィッチ)と暮らすシングルマザー。エスマは集団セラピーに参加しているが(生活補助金が出るからである)自分の体験は語りたがらなかった。娘には父親はシャヒード(先だっての戦争で死んだ殉教者という意味)だと嘘をついていたが、本当は集団レイプされたことによって生まれた子供だったのである。サラの修学旅行のお金を払わなければならない期日が近づいており、エスマは工場勤務と裁縫の内職の他にナイトクラブに勤める。(エスマは胸毛を露出した男性におびえたり、体に傷があったりと彼女の凄惨な経験を物語る)父親がシャヒードであれば旅行費用は免除されるというのに、その証明書を見せてくれない母親に苛立つサラ。サラのボーイフレンドのサミルの父親はセルビア人に喉を掻き切られて惨殺されたシャヒードだといい、深い憎しみをセルビア人に抱いていた。(彼は隠し持っている拳銃をサラに見せる)一方、エスマが働くナイトクラブの用心棒ペルダは、様子のおかしいエスマが深い傷を負っていることに気づくのだった。ペルダは父親の遺体確認の時に見かけたのではとエスマに話しかける。エスマは父親の遺体確認をしたと言うが自分の体験は話さなかった。エスマの友人サビーナは同窓会に41人のうち11人しか生き残っていないと嘆く。他は死んだか行方不明になっているのだ。(現在もなお遺体が掘り起こされて確認作業がなされている。)こういった作品が棚に1本きりしかなく、韓国やアメリカのくだらないドラマが棚に多く並べられているのを見ると悲しい!こういった1本は駄作の1000本より価値があると思うのだが・・・・。散々陵辱されて(妊娠中もずっと)産みたくなかった子を見たとき、こんな可愛らしい子がこの世にいるのか!と思ったと語るエスマに泣ける!!