ドイツからまた凄い映画がやってきた。ドイツ・オーストラリアからは「善き人のためのソナタ」や「隠された記憶」などうならせるような映画が度々製作されるのだが、本作も驚かされた。こういったピアノものは最近目白押しで「僕のピアノコンチェルト」(スイス映画)や韓国からも題名は忘れたが出ていたと思うが「4分間のピアニスト」は一味違う!文学や芸術の引用もうまい!監督はクリス・クラウス。10年間の構想からやっと映画化されたが、最初から主役のジェニー役を選ぶのに難航したらしい。それで1200人のオーディションの末ほとんど無名の女優ハンナ・ヘルツシュプルングが選ばれたのだ。この女優がとても上手い!殺人の罪で刑務所に収監されているジェニー・フォン・レーベル(ハンナ・ヘルツシュプルング)が二段ベッドの上で目を覚ますと下に寝ていた女囚の一人が枕元で首をくくって死んでいた。ジェニーはその女のポケットからタバコを一本取り出し吸う。一方トラウデ・クリューガー(モニカ・ブライブトロイは1944年生まれのオーストリアの女優。100本以上の映画に出演している大ベテランだ。脚本家でもある。)は80歳のピアノ教師だが、三年間無給で刑務所に通いオルガンを弾いていた。ミサの時間にいつもの通りにオルガンを弾いていると女囚の一人がメロディに合わせて指を動かしているのを見たトラウデは自腹を切ってグランドピアノを購入し、囚人たちにピアノを教えることを思いつく。集まった生徒は4人。一人は今朝自殺した女囚と看守のミュッツエ(スヴェン・ピッピッヒ)とジェニーと全く弾けない女囚。ミュッツエはトラウデを芸術の一番の教師だと思い慕っていた。それでピアノの購入に500ユーロも出費したのだ。今日もオテロや魔笛、トスカ、マイスタジンガーの一節を言うトラウデの問いに答えるミュッツエ。答えのつまるミュッツエにトラウデは「学びなさい。いつか到達できるわ。」と言う。最初のレッスン日、ジェニーはトラウデにそんな汚い手でピアノを弾いてはダメといわれて激怒しミュッツエに大怪我を負わせてしまう。看守長に手錠をかけられたままレッスンをしろと言われるジェニー。報道陣が集まりジェニーは手錠をかけたまま後ろ手でピアノを弾いてみせるのだった。この監督は演出がうまいのだ。水から出されてパタパタする魚や瀕死の蛾など、巧みに登場人物の心象を表現する。トラウデの娘時代(ナチスの収容所マイアベーアに看護士として勤労奉仕していたころの悲しい過去)をはさみ「美に殉じてきたの」というトラウデの人生とジェニーの天才少女としての過去と養父との忌まわしい過去が交錯する。善人と思われる人間が意外に悪人だったり、その反対だったりするが、トラウデがミュッツエの娘クララに「お辞儀の仕方は覚えたの?」と執拗にいうのと同様、<学ぶ>ということの重要性を説く。教えるほうも教えられるほうも忍耐が必要なのだ。人が人であるために<人でなし>を作らないためにも・・・・。映画の中でピアノ曲を担当しているのはドイツで有名な日本人のコンサートピアニスト<白木かえ>である。音楽の使い方をよくわかっている監督だ。