19世紀のロンドン、帰港したバウンティンフル号の甲板に立つベンジャミン・バーカー(ジョニー・ディップ)の姿があった。無実の罪でオーストラリアに流刑になっていたバーカーは15年ぶりにロンドンの地に降り立つ。航海中に知り合いとなった水夫アンソニー(ジェイミー・キャンベル・バウアーは20歳の英国美青年だ)とも別れたバーカーは以前住んでいた家に立ち寄るのだが、そこにはミセス・ラベット(ヘレナ・ボナム・カーターは監督の妻でもある)がロンドン一まずいパイを売っていた。ベンジャミンの正体を知ったラベット夫人はバーカーの妻子の消息を語る。15年前、腕のいい理髪師だったベンジャミン・バーカーは妻ルーシー(ローラ・ミッシェル・ケリーは本作で唯一のプロの歌い手だ)とまだ赤ちゃんの娘ジョアナと幸福に暮らしていたのだが、ルーシーの美しさに目をつけたターピン判事(アラン・リックマン)がバムフォード(ティモシー・スポール)に命令してバーカーを無実の罪で捕らえて流刑に処してしまったのだ。その後、ターピン判事はルーシーを屋敷に招待して陵辱してしまう。悲観したルーシーは砒素を飲んでしまい、残された娘ジョアナは判事が引き取って養育しているというのだった。怒り狂ったバーカーは復讐の鬼と化し名前もスウィーニー・トッドと変える。ある日水夫アンソニーはある屋敷の二階の窓で歌を歌う美しい娘に心を奪われる。物乞いの女に娘のことを聞くとタービン判事の娘ジョアナ(ジェイン・ワイズナーは21歳の現役音大生だというが、実に美しい声である)だという。だがタービン判事に招きいれられたアンソニーはジョアナに色目を使ったとしてバムフォードにしこたま鞭打たれるのだった。イタリア人理髪師ピレリにペルシャ系ユダヤ人のコメディアン、サシャ・バロン・コーエン(独特の個性を持つ俳優である)。ピレリにこき使われているトビー少年にエドワード・サンダース(大物俳優たちの間でよくがんばっている)。あまりネタバレすると面白くないのでこれ以上は言えないが、150年以上も英国でロングランを続けているミュージカルということもありストーリーは大変しっかりしていて見応えが十分にある。だがミュージカル・ファンの人にはお勧めできない。ジョニー・ディップは確かに頑張って歌ってはいるが、アラン・リックマンといいヘレナ・ボナム・カーターといい聴くに耐えない歌唱力なのだ。(なぜミュージカル仕立てにしたのかと思う。通常の映画でも良かったのではないだろうか?)だが、ティム・バートンの映画が好きな人にはたまらなく素敵な映画なのだ。ジョニー・ディップの殺しの場面や表情にゾクゾクする。ヘレナ・ボナム・カーターもゴシックなビジュアルがとてもいい。流血の多さやバートン・カラーともいえる色彩やセット・デザインなどため息が出る。ラストのドンデン返しからストーリーが収束し終わるのも余韻を味合わせてくれる。