「博士の愛した数式」を書いた小川洋子の「薬指の標本」をフランスの女性監督ディアーヌ・ベルトランが映画化。ワタシの思っていたイメージとは違うが、これはこれでいいのではないだろうか。音楽が特に良く、英国の<ポーティスヘッド>が担当している。ボーカルのベス・キボンズの声がとても心地よい。主人公の女性には13歳の時にモスクワの地下鉄でスカウトされたというウクライナ出身の女優オルガ・キュルレンコが扮している。痩せていた「ヒットマン」のときとは全くイメージが違い、こちらの方が格段にヌードも美しい。イリス(オルガ・キュルレンコ)は工場で働いていたが、左指の先を切断してしまい工場を辞める。知らない港町へ行き(この街の娼婦街などは不思議な美しさ)標本室の受付の職を得るが、(この標本室建物が秘密の隠れ家みたいでそそられる)そこには標本技術士(マルク・バルベ)がいた。彼の仕事は様々なものを標本にすることだった。ある少女は自宅の焼け跡に生えていたきのこを持ってくる。ある婦人は楽譜を持参して音を標本にしてくれと依頼する。完成した標本は顧客には返さず、標本室に保管される。なぜならそれらの標本は顧客が忘れてしまいたい品だからである。標本技術士はイリスに美しい靴をプレゼントしてくれる。(原作を読んだときは、あまりにこの場面が官能的でどう演出するのかと思ったが意外に普通だった。)そしてこの標本室が以前は女子寮で昔から住んでいる老婦人がおり、標本にして欲しいという音をピアノで奏でる。(この曲がサティほど沈んでいなくて、湖面を月光が渡るように冴えた音で美しい)ある日、靴磨きを50年やっているという男が飼っていた文鳥の骨を持って標本にして欲しいと依頼する。男はイリスの靴を見て「清楚で媚びない。強い意志を感じるよ。まるで履いて生まれたみたいだ。・・・だが履きすぎはダメだ。足を失う。靴が足を侵し初めている。」と謎めいたことを言うのだった。イリスの借りている部屋も船員コスタとシェアしているのだが、勤務形態が違うので会った事もなくすれ違いでベッドが2つ並んでおり、そういった状態もなんだかエロティックなのである。いかにもフランス人好みの話なのであるが、ワタシは日本人で映画化して欲しい。「靴を脱げば自由になる。」という靴磨きの男に「自由になりたくないの。」と答えるイリス。女は謎である・・・・。