「CSI」や「24」なども面白いが、やはり「コロンボ刑事」に戻ってしまう。ベスト・セレクションの中の3本「野望の果て」「自縛の紐」「別れのワイン」がラリー・コーエンによる脚本・原案なのだ。中でも「別れのワイン」は人気のベスト3に入っている。長きに渡って脚本を書いているコーエンの筆は衰えていないことを「セルラー」と本作「フォーン・ブース」は証明している。どちらも80分前後の作品だが、観客はポップコーンも頬張れない。一瞬たりともスクリーンから目が離せないのである。監督はジョエル・シューマッカー。ロケ地はNYのフォーン・ブースとその周辺からは出ない。主役のコリン・ファレルはワンシーンの長丁場を一人芝居で通した。素晴らしい集中力である。撮影期間もすこぶる短い。勿論低予算であるが、クオリティは高い!コーエンは20年まえから、このアイデアを思いついていたらしい。NYには800万人の人が暮らしている。1000万本の電話線がNY市民の暮らしを支えている。そのうちの300万人は携帯電話を所持し200万人が公衆電話(フォーン・ブース)を使っている。ここ8番街53丁目のフォーン・ブースも今日を最後に取り壊されようとしていた。スチュ・シェパード(コリン・ファレル)は業界人を気取っているバブリシスト。高級ブランドスーツと同様、華美な嘘を身にまとったスチュは携帯を駆使してスターのスキャンダルを出版社に売り込む。アシスタントのアダムにスーツを買えと金を渡したスチュはフォーン・ブースに入り、結婚指輪をはずした。すると太ったピザ配達人の男がやってきて、スチュにピザを渡そうとする。「お前が食いやがれ!」と紙幣を投げて追い払う。そしてまだ売り出し中の新人女優パメラ(ケイティ・ホームズはトム・クルーズの嫁)に有力者に紹介してやるからと仄めかしてデートに誘うが、パメラも用心深くなかなかなびかない。受話器を下ろしたスチュ。突然に鳴り出す電話にとっさにとってしまう。「人間っておかしなもんだな。スチュ!電話が鳴ると受話器をとる。」受話器の声(キーファ・サザーランド)は言うが、スチュは相手にしない。だがその声の主はスチュのことをよく知っているようだった。電話を切ろうとするとライフルの照準の赤い点がスチュの胸元を狙っている。「電話を切ると無関係の人間が死ぬぞ。」電話をしようとしていた売春婦の女が騒ぎ出す。女はブースから出ないスチュを追い払おうと用心棒の男を呼んでくるのだった。無理矢理スチュを引っ張り出そうとする用心棒。「早く追っ払って欲しいか?スチュ?」スチュは暴力をふるわれて思わず「Yes!」と叫ぶ。用心棒はバタリと倒れるのだった。悲鳴を上げる売春婦たち。あたりは騒然とし始める。TVクルーや警察官らも集まってくる。妻のケリー(ラダ・ミッチェル)とパメラも現場に駆けつける。駆けつけたレイミー警部(フォレスト・ウィテカー)はスチュの様子がおかしいことに気づく。声の主はスチュの嘘にまみれた人生を懺悔しろと言うのだった。この映画が面白いのは、あり得ないことを登場人物がしないことである。大抵この手の映画では登場人物がとても愚かで下手なことをするが、ここに出てくるスチュも警部も妻も知力を駆使する。こっそり携帯で警察に通報しようとしたり、逆探知したり、妻もパメラの存在に騒ぎたてない。濃密な80分である。