1940年〜1959年にタイで実際に起こった猟奇連続殺人事件を再現してみせた本作はホラーというより社会派映画の様相を呈している。音楽や美術も優れていて、他の惨殺映画とは一味違う。なぜ犯人が幼児ばかりを殺害しその内臓を食べたのか?監督はブラニー・ラッチャイヤブ。主役のドゥアン・ロンの熱演ぶりもリアルだ。1927年中国フィライ県の寒村。少年時代のウン・リーフィは喘息持ちで母親は必死で彼の看病をしてくれた。母は死刑囚の心臓を持ち帰り茶瓶に入れて煮た煮汁をリーフィに飲ませるのだった。(死刑囚の遺体を村人が解体して持ち帰るのだが、中国では人肉や赤子の調理法が残されているからアリなのだろう)ほどなく第二次世界大戦が勃発。日本軍に虐殺される村人たち。(その日本軍を殺害して内臓を食う場面もある)家族は皆亡くなり母とリーフィが2人残される。母はリーフィにタイへ行くように言うのだった。1946年タイ、バンコックに上陸したリーフィは迎えに来てくれるはずの叔父がこず、入国税10バーツも払えず、頭を剃られて収監されるがほどなく叔父が迎えにきてくれる。が最初に世話してくれた先は鶏肉業者で毎日、鶏を殺して羽をむしる作業ばかりをさせられる。親方の2人の娘に悪さばかりされて怒るとその女房に気絶するほど殴られるのだった。リーフィは親方一家がでかけた隙に金を盗んで出奔。(2人の子供が惨殺される事件が起こっている)タブサカエ地区に流れたリーフィは人足の仕事をするが力がなく、他のタイ人らにバカにされる。持病の喘息も悪化し薬を買うがそれも仲間らにからかわれて無くしてしまう。親方の娘メイはリーフィに優しくしてくれるのだが、リーフィは発作と悪夢から起こそうとしてくれたメイを誤って殺害してしまう。驚いたリーフィは死体を隠すが発見されて警察や報道人らがやってくる。その中に若い美人記者ポムもいた。彼女は幼い頃、男に脅されて妹を殺害された忌まわしい過去をかかえていたのだ。ポムは喘息の発作に苦しんでいるリーフィを見てお金を渡してやる。親方はリーフィに僅かばかりの金を渡してナコーン・パトム県で農業をしろ!と言う。人足は無理だと思った親方の温情であった。だが、その農業も苦労してやっと実った作物が水害で全滅してしまう。失意と発作でリーフィは村の祭りに出かけるのだが、赤い風船を結んで小さな女の子をおびきだし殺害。その内臓を取り出して、喘息の薬とするのだった。ナコーン・パトム県に移ったリーフィは親戚の豆腐屋ホアンを頼る。ホアンは中国に帰りたいというリーフィにラヨーン港へ行けというのだった。その夜ナコーン・パトム祭りにやってきたリーフィはまがいもののネックレスを盗み、今度はカキ氷で少女をおびきだし寺院で殺害。ネックレスでホアンに金をもらおうとする。ラヨーン港に逃亡したリーフィは洞窟で少年を襲うが、ナイフやネックレスなどが決め手となり警察も又彼を追っていた。結局5件の少年少女殺害の罪でリーフィは1959年9月16日に死刑となる。彼の殺害は喘息の発作がひどくなると起こるのだが、彼自身とても信心深い一面も持っていた。過酷な状況にある移民が全て猟奇事件を起こす訳ではないが、肉体的精神的に追い詰められた人間は誰しも例外ではない。人間は人間らしく扱われて初めて人間になるのかも知れない。そんなことを考えさせる映画であった。