フィリップ・K・ディックの「暗闇のスキャナー」を「スクール・オブ・ロック」や「ウェイキング・ライフ」のリチャード・リンクレイターが映画化した。本作はロトスコープという手法をとっており2年前に実写を撮影したものにアニメーション技法を加えている。この手法だと一分間のシーンを完成させるのに30人のスタッフが500時間かけないと出来ないらしく、なんと19ヶ月もかかったという代物だ。だが冒頭の麻薬中毒の男フレックが頭をかきむしり多くの虫が湧き出てきて殺虫剤を大量に噴霧するシーンには目を奪われる。(映画の中盤はジャンキーの意味不明のダラダラ会話が続きちょっとかったるい)だがラストでアッと言わせるオチはなかなかにいいのだ。ディック自身が重度のジャンキーだったので、(麻薬更生施設でディックは7人が死に8人が精神崩壊や脳障害・内臓障害などで苦しむさまを目の当たりにしてきたという)幻覚の描写はリアルだ。7年後の未来、物質Dという麻薬がはびこり警察は撲滅に躍起になっていた。カリフォルニア州オレンジ郡のおとり捜査官ボブ・アークター(キアヌ・リーブス)はコードネームをフレッドといい、麻薬捜査のためジャンキーたちに自宅を開放していた。集まってきたのはパリス(ロバート・ダウニーJr)とラックマン(ウッディ・ハレルソン)、重度のフレック(ロリー・コクレン)売人で恋人のドナ(ウィノナ・ライダー)だった。彼らを監視するアークターだったが、彼らと付き合ううちに自身もD物質の中毒になっていく。麻薬課ではスクランブルスーツを着用するため(何万人もの顔をスキャンしているために実態がつかめない)アークターは自分をも監視する事態になってしまう。政府の麻薬リハビリ施設<ニューパス>があやしいとにらんでいた当局は究極の捜査官を送り込もうとしていたのだ。厄介なのは物質Dという麻薬は右脳と左脳を分断させてしまうということである。アークターもまた重度の麻薬中毒になってしまい、自分が何者なのかもわからなくなっていた。ドナは幻覚を見て収拾のつかなくなったアークターを<ニューパス>に入所させる。アークターは廃人同様だがドナが言っていた<白い花>のことは微かに記憶していたのだった。<ニューパス>の中で作業に出るアークターはあたり一面の白い花畑をさまよう。そしてその花を一輪、手折ってポケットに入れるのだった。究極の捜査官であり究極の愛の物語でもある。