フィリップ・リオレ監督の「灯台守の恋」(原題はレキピエ、相棒という意味である)は2人の寡黙な男の友情と美しい人妻の話である。舞台となるブルターニュ海岸辺境の地、ウエサン島はイギリスのケルト民族が住み着き排他的な土地柄である。灯台守というと「喜びも悲しみも幾年月」などを思い出してしまう日本人だが、この灯台守は全く違う。灯台が荒海の上にポツンと建っており、船で行くのだがロープで吊り上げて中に入るという大変な場所にあるのだ。2人の男が交替制で灯が消えないよう見なくてはならないし、航行する船に指示を出してやらなければならない。高波がザブンザブンと灯台を洗い、とても外には立っていられない。下手をすれば荒波か突風に体を持っていかれるからだ。カミーユは久しぶりに故郷に帰ってくる。10年前に父イヴォンが亡くなり、1年前に母マベが亡くなった。帰島したカミーユを出迎えたのは叔母ジャンヌ(ナタリー・ブザンソン)だった。空き家となった両親の家を買いたいという夫婦がやってくる。家にはアントワーヌ・カッサンディという人が執筆した「私の世界の果て」という著書が置かれており、表紙は父が灯台守をしていたジュマン灯台であった。カミーユはその本を読み始める。時は1963年6月、ウエサン島に一人の男が灯台守としてやってくる。男はアントワーヌ(グレゴリ・デランジュールは微笑の貴公子と呼ばれているらしい。小太郎はヨン様より遥かにいい役者だと思う)といい、アルジェリア戦争で左手の指を数本失くしていた。元時計職人だったというアントワーヌは財務局や郵便局の職を蹴って灯台守の仕事に志願したという。島の男たちは、その手では灯台守の仕事はきついと釘を刺す。だがアントワーヌとイヴォンの妻マベ(サンドリーヌ・ボネール)は強く惹かれあう。当初、アントワーヌに冷たかったイヴォンだが、誠実な人柄に接する内にアントワーヌが好きになってゆく。アントワーヌも又無骨だが愛情深いイヴォンの人柄が好きになり2人の間には固い友情が生まれていくのだった。だが周囲の人間はアントワーヌに冷たい。非番の時、漁師の仕事がしたいというアントワーヌにその手では無理だと漁師たちは拒否し、女たちが働く缶詰工場で働くが女たちに人気のあるハンサムなアントワーヌに工場長は冷たく当る。中でもカフェの娘ブリジッド(エミリー・ディケンヌ)はアントワーヌを好きになる。灯台守仲間は嘆願書を募ってアントワーヌを排斥しようとするが、イヴォンは嘆願書にサインをしないのだった。7月14日の革命記念日、アントワーヌは自分が灯台に残るというが、アントワーヌを排除しようとしている男と相棒にならなくてはならないので、イヴォンは自分が残るというのだった。革命記念日の夜、ブリジッドにダンスを誘われたアントワーヌだったが、ブリジッドに横恋慕している男とトラブルになる。殴られても殴り返さないアントワーヌをなじるマベ。革命を祝う花火に島民は夢中になっていた。その最中2人は結ばれるのだった。それを見ていた工場長。(彼はマベが好きだったのだが、相手にされないので忌々しく思っていた)情熱に身を任せてしまった2人だったが、アントワーヌはイヴォンが妻を深く愛していることを知り、この島を立ち去る決心をするのだった。カミーユはアントワーヌが自分の本当の父だと知るのだった。叔母は「あなたの父さんはあなたを溺愛していたわ。」と言う。カミーユは灯台記念館に行き2人の父の写真を見るのだった。2人の男の友情に泣ける話である。厳しい海に点在する灯台に魅せられる人間の気持ちがよくわかる・・・・荒々しい風と波にもまれ屹立する灯台の姿は美しい。そしてそこから真紅の夕陽が落ちるさまも心ひかれる。