キャッチボール屋(70点)
大崎章監督の「キャッチボール屋」はノンビリした(話の進め方も会話も)作品であった。大山タカシ(大森南朋)は会社をリストラされて学生時代に野球部で一緒だった山田(三浦誠己)らとアルツハイマーに罹っているという監督(峰岸徹)のお見舞いに行った帰り、チームの連中と居酒屋でしこたま飲んだ。(タカシが万年補欠だったということが語られ、大好きだった恭子ちゃんが結婚したと聞き恭子の住む東京行きの列車に乗る)翌朝、目の覚めたタカシは見知らぬ公園のベンチにいたのだ。どうしても昨夜のことが思い出せない。目の前では<10分100円>という看板を掲げたキャッチボール屋さんがキャッチボールをしている。キャッチボール屋(庵野秀明)はタカシに小用をしてくるからとグローブとボールを渡す。お客が次々にやってきてタカシはキャッチボールをするのだが。売店のおばちゃん(内田春菊)から手紙を渡されるのだった。キャッチボール屋さんからである。その手紙にはアパートと仕事をしばらくの間、受け継いで欲しいというようなことが書いてあった。同封された地図とカギを頼りにその場所へ行くタカシ。そこには家財一切がありレコード・プレーヤーには<毎日夜10時30分に山口百恵の「夢先案内人」をかけてください>と張り紙がしてあった。その音を頼りに向いのコインランドリーにやってくる盲目のアジア人女性(キム・ホジョン)。毎日、牛乳の差し入れをくれる売店のおばちゃんは公園が工事のために封鎖されるので、家出した夫の帰ってくる場所がなくなるのでは・・・と心を痛めている。サングラスに真っ赤なジャージー姿の坂本(寺島進)やベンチに座ったまま何も喋らない長身のサラリーマン後藤(松重豊)、4代目のキャッチボール屋さんに会いたがっているOL(キタキマユ)、子供との思い出を引きずったままの野球下手のおじさん(光石研)、履歴書ばかりを書いている借金取り(水橋研二)など過去と決別できない人々がタカシの周りに集まってくる。後藤は甲子園で五打席連続敬遠をされた高校球児の頃がトラウマになっておりボールの打ち方を忘れたといい、坂本は敬遠を指示した監督を恨んで野球から離れられない。そんな2人にも決着をつける機会が訪れる。タカシも又、監督が「タカシ!ドンマイ!ドンマイ!」と叫ぶ言葉の意味をようやく知るのだった。キャッチボールに言葉はいらない。お互いの信頼がなければキャッチボールは出来ない。そんなことをこの映画はさりげなく教えてくれる。
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