司馬遼太郎の<新撰組血風録>から「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃」を切り取って大島渚監督が映画化。1864年(元治元)5月20日の日付で近藤勇が「隊内で男色が流行している」と書簡に書いており、そういったことを司馬が短編にしたと思われる。1995年の撮影中に監督が脳溢血で倒れ、病状が良くなるまで延期となったので公開は1999年になった。1865年(慶応元)京都の新撰組に2人の若者が入隊してきた。一人は女とまがうほどの美貌の剣士、加納惣三郎(松田龍平はこの時まだ16歳)ともう一人は田代彪蔵(浅野忠信)である。男色の田代は惣三郎に衆道を教えようとする。隊員の湯沢藤次郎(田口トモロヲ)は惣三郎を手篭めにするが、何者かに惨殺されるのであった。土方歳三(ビートたけしが美男の土方などやると土方ファンが怒るだろうに)は山崎蒸(トミーズ雅、本当に吉本自重!)に遊郭の和違屋に連れていって女の味を教えてやれ!と言う。和違屋(桂ざこば)は花魁(神田うの)をお座敷に連れてくるが、惣三郎はその気にはなず、花魁を拒絶する。だが山崎も又、何者かに襲われる。残された小柄から犯人は田代だということになるのだが。実際に襲ったのは惣三郎自身だったのである。土方と沖田総司(武田真治)は惣三郎を呼び出して、田代を切るように命令するのだった。何も知らない田代はノコノコと出てくる。田代は一刀のもとに切り捨てられるのだった。近藤勇(崔洋一)も沖田総司も又、惣三郎に懸想していたことを聞いた土方は闇に妖しく咲く桜の散るのを見ながら「男になぶられているうちに化け物になった。」とポツリと呟く。大島渚監督らしい他愛もない話であるが、「ベニスに死す」のような画面を作ろうとした撮影監督の栗田豊通、美術監督の西岡善信、音楽の坂本龍一、黒を基調とした新撰組により近い衣装を担当したワダエミなど一流の仕事人が最高の仕事をしており、かろうじて格調を保っている。デビュー作にして松田龍平の凄美が妖しくも恐ろしい。