叫びとささやき(85点)

Cries & Whispers (Sub)Cries & Whispers (Sub)
(2000/06/16)
Harriet AnderssonKari Sylwan

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中高生の時に劇場で一人観た映画なのだが(さすがにベルイマンを一緒に観に行こうといえる友人はいなかった。)衝撃的映像に押し流されたような気分にさせられ長らく尾を引いた作品であった。イングマール・ベルインマンは昨年スウェーデンの孤島フォーレで89歳の生涯を終えた。このスウェーデンの名だたる貴族出身の監督は(兄は外交官、姉は小説家)人間の本質を深くえぐる作品で知られているが、あまりに神経を逆なでするような演出が多いので敬遠される向きもある。観たくないものを観たという感覚を観客に与えるのだ。スヴェン・ニクヴィストのカメラワークも素晴らしい!美しい北欧の森と流血のような深紅、登場人物のドレスは真っ白、漆黒の家具調度など見る者を圧倒する。ワタシの学生時代はとりあえずフェリーニとヴィスコンティ、ベルイマンは三種の神器のように言われていた。キネマ句報などではよく特集を組まれていたような気がする。「野ばら」や「ペルソナ」など評価の高い作品もあるが、本作がイチオシである。19世紀スウェーディンの古い館に住むアグネス(ハリエット・アンデルセン)は37歳になるが、過去に3歳の子供を亡くしてからは召使のアンナ(カーリ・シルバン)と2人きりで館に暮らしていた。2人はご主人とメイドの関係を超えた深いつながりがある。だがアンナは子宮ガンを患い悪化の一途をたどっていた。そんなアグネスを献身的に看病するアンナ。そこへ見舞いにやってくる姉カーリン(イングリット・チューリン)と妹のマリア(リブ・ウルマン)。カーリンは十代で20歳年上の外交官フレドリックに見初められて結婚。5人の子供をもうけたが夫にも子供にも愛情を感じてはいなかった。なかでも夫には敵意と軽蔑の感情しかもてなかったのだ。(彼女は5人も出産しているが性の歓びを知らないのだ)妹のマリアは美しく見せることに人生の全てをかけており、裕福な商人ヨアキムと結婚して5歳の子供がいた。やせ衰えたアグネスの病の苦しみは尋常ではなかった。アグネスのうめき声や叫び声とほかに囁き声が聞こえる。そんなアグネスをふくよかなアンナが抱きしめる映像が美しい。カーリンとマリアはアグネスの日記を読むのだが、そこには姉妹に対する愛情が記されていた。カーリンはマリアに対する憎悪を詫びる。一時邂逅したかに見える姉妹。だがそれは一時の感傷でしかない。そしてアグネスは苦しみ抜いて亡くなる。(病の苦しみをこれでもか!と見せられる)牧師の祈りの言葉に触発されたようにカーリンは夫とのベッドでワイングラスの破片で自身の秘所を傷つけて血まみれのそれを夫に見せる。恐ろしい映画である。アグネスの日記さえ本当かどうかもわからない。孤独・病苦・虚飾・憎悪や空言葉で映画は息もできない。時折、森を散策する姉妹らの明るく美しい様が挿入される。ベルイマンは生い立ちや生来の性質において人間嫌いだったのであろう。オフ・シーズンになったら鳥も通わない孤島で隠遁生活を送っていたのだから。

クジラの島の少女(60点)


マオリ族出身の作家ウィティ・イヒマエラの「ザ・ホエール・ライダー」をニュージーランド出身の女性監督ニキ・カーロが映画化した。マオリ族の伝統と血脈が失われつつある現在に奇跡を起こす少女の物語である。村の長老コロ(ラウィリ・パラティーン)の長男で後継者ポロランギ(クリフ・カーティス)に双子の赤ちゃんが誕生するのだが、女児だけを残して母親も男児も死んでしまう。正当なる後継者が死に祖父は落胆する。そんなコロに失望したポロランギは村を出て行ってしまうのだった。残された女児はパイケアと名づけられて祖父母に養育される。祖父のコロはクジラに乗ってやってきたという偉大なるご先祖の血を絶やさないためにも、男の後継者を早急に決定しなければならない責務があった。それで村の12歳の少年を集めて伝統の武術や踊りなどを自ら教育する祖父。パイケア(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)もまた同じように学びたかった。だが女の子は聖なる道場に足を踏み入れるのさえ嫌がられるのだ。ある日、ドイツで世界的アーティストになっていた父ポロランギが帰ってくる。この村に留まって後継者を作って欲しい祖父と、自分のやっていることを認めて欲しい父の確執はますます深まるばかりだった。女教師と再婚して欲しいと思う祖父にドイツ人の彼女がいることを打ち明けるポロランギ。しかも妊娠しているというのだ。大喧嘩の末ポロランギはパイケアをドイツにつれていくと言う。出発するという朝、パイケアは海が呼んでいるような気がして祖父母のところに戻るというのだった。孫娘をかわいがってはいるが、女はダメ!と徹底して拒否する祖父や、村や父親が嫌だからと娘をほうっておき勝手な外国暮らしをしている父の姿を見ていると、ここまでアメリカ的利己主義、個人主義がマウイの人々にも浸透しているのか!と反対に思ってしまう。近世を除いて母系社会の日本人であるワタシには到底承服しがたい話であった。もっとマオリ族の叡智に言及した話だと思って期待してみたのだが、描き方が浅い!ちょっとガッカリ!である。
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